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R.シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」


ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1954年3月8日録音をダウンロード


冒頭部分があまりにも有名です



これはタイトルの通り、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」に影響を受けて創作された交響詩です。
とにかく冒頭の、「太陽をクレーンで吊り上げる」と形容された部分が「2001年宇宙の旅」で使われてすっかり有名になりました。私の職場で、同僚から「2001年宇宙の旅のCDを貸してほしい」と頼まれたので、「あー、ツァラトゥストラはかく語りきだね」と答えると、「そんな曲じゃなくて、2001年宇宙の旅ですよ!!」という感じで全く話がかみ合わなかったことがありました。
ややこしいので、「はいはい!」と言って後日CDを手渡したのですが、それでも彼は「2001年宇宙の旅の後ろに、訳のわかんない音楽が延々と続いている!」とのたまっておりました。
まあ、それくらい、この冒頭部分は有名です。

ちなみに、全体の構成はあの有名な冒頭部分(導入部)を含めて以下の9つに分かれています。

1. Einleitung (導入部)
2. Von den Hinterweltlern (世界の背後を説く者について)
3. Von der großen sehnsucht (大いなる憧れについて)
4. Von den Freuden und Leidenschaften (喜びと情熱について)
5. Das Grablied (墓場の歌)
6. Von der Wissenschaft (学問について)
7. Der Genesende (病より癒え行く者)
8. Das Tanzlied (舞踏の歌)
9. Nachtwandlerlied (夜の流離い人の歌)

作品はニーチェの「超人思想」に深く共感したと言うよりは、ニーチェの著作から気に入った部分を抜粋して音楽的に表現したエッセイみたいな雰囲気の作品と言った方がいいのかもしれません。作品全体が一つの統一感のもとにまとめられていると言うよりは、次々と風景が変わっていくような風情を楽しめば、「訳のわかんない音楽が延々と続く」のも我慢できるかもしれません。
それと響きのゴ−ジャスな事!!
あまり難しいことを考えずに、エンターテイメント的に楽しむ音楽なのでしょうね。

アメリカのゴールデンエイジを象徴する録音

聞くところによると、この録音はライナー&シカゴ響のコンビにとっての最初のステレオ録音だったとのことです。ただし、その録音の仕方は後年のようにマイクをオケの中に林立させて、それを後からミックスダウンしてお化粧直しをするというようなものではなくて、ステージ上に設置されたわずか2本のマイクロフォンで収録されたものとのことです。
まさに一切ごまかしなしのオケの音が封じ込められています。

そのことを思うと、このオケのアンサンブルの凄さは特筆ものです。もちろん、90年代以降、オケの精度は飛躍的に向上しましたから、現在はこの程度の精緻さは別に珍しくも何ともありませんが、50年代中葉においてのこのアンサンブルは絶句ものだったはずです。
ただし、最近のオケは精度は上がっても、肝心の響きがどこか無機的につまらなく思えるのですが、このシカゴ響のひびきは厚みとゴッツサみたいなものが横溢していて何とも言えずガッツがあります。これが、後年のショルティの時代になると、描かれる世界がスペースオペラみたいな風情になって、人間の物語という感じが次第にしなくなります。これは、カラヤン&ベルリンフィルにおいても事情は同様です。
もちろん、だからライナーの方がいいというような短絡的な話ではありません。要は、描こうとする世界がずいぶん異なると言うことです。

それにしても、3月6日に英雄の生涯、8日にツァラトゥストラをそれぞれわずか一日で仕上げているのですから、もしかしたら、ほとんど一発録りに近いのではないでしょうか。音楽からほとばしるようなガッツを聞かされると、そんな気がしてきます。
まさに、アメリカのゴールデンエイジを象徴する録音なのかもしれません。