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ショパン:マズルカ集
P:マウツジンスキ 1961年10月9~11日録音をダウンロード
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- ショパン:Mazurka Op.68-2
- ショパン:Mazurka Op.68-4
ポーランドの代表的な民族舞曲
マズルカはポロネーズとならんで、ショパンが終生愛し続けたポーランドの民族舞曲です。ただし、ポロネーズが一般的に規模が大きくて劇的な性格を備えているのに対して、マズルカの方は規模がとても小さくて、そのほとんどが簡素な三部形式をとっています。
また、よく知られていることですが、マズルカと言ってもその性格や特徴は地域によって大きな差異があり、専門家の受け売りですが、基本的には「マズレック」「クヤヴィアック」「「オベレック」と呼ばれる3種類があるそうです。
そして、ショパンはそれらの形式を自由に取り入れて、例えば、マズレック風のリズムにクヤヴィアック風のメロディを重ねるなどして、自分なりに再構築をすることによって彼独特のマズルカという形式を作り上げていきました。
その意味では、ショパンのマズルカはポーランドの民族舞曲を母胎としながらも、時間を追うにつれてより一般的な性格を持っていったと言えます。
言葉をかえれば、土の香りを失う変わりにより洗練されていったと言うことです。
その分岐点はおそらくは中期の傑作と言われる作品番号で言えば33番の4曲あたりにあることに異存を唱える人は少ないでしょう。マズルカが本来持っていた粗野で鄙びた風情は姿を消して、明るさと軽さが前面にでてきます。ですから、よく「マズルカには華やかな技巧の世界は無い。」と言われますが、晩年のマズルカは和声的にも構成的にもかなりの工夫が凝らされています。
もちろん、どちらをとるにしてもショパンの音楽が素晴らしいことは言うまでもありません。
ショパンてぇのは、こんな風に弾くモンだよ
「Malcuzynski」は「マウツジンスキ」と読むそうです。読み方さえ曖昧になるほどに、今ではほとんど忘れ去られた存在のピアニストですが、50年代から60年代にかけてはショパン弾きとしてそれなりのポジションを占めていたようです。それがどうして忘れ去られてしまったのかという興味もあって彼の一連の録音を聞いてみたのですが、正直なところ、その理由が全くもって分からないのです。彼の録音を聞く前に、カペルの録音をまとめて聞いていました。カペルは若くして亡くなったこともあって、かなり忘却の淵に足を踏み込んではいるものの、知っている人は知ってるという存在で踏みとどまっています。それと比べれば、マウツジンスキの凋落ぶりは著しいものがあります。
ところが、この二人の録音を聞いてみれば、私の好みは明らかに「マウツジンスキ」です。
まず、彼の録音を聞いて真っ先に気に入ったのは、その響きの軽さです。
実に飄々と何の気負いもなくショパンのロマンを描き出していくピアノは実に魅力的です。それは、ともすれば鍵盤をぶっ叩くことに力を注ぎすぎているカペルやホロヴィッツのピアノとは対極に位置する世界です。そして、そう言う軽やかなショパンを聴いていると、カペルみたいな若手連中に対して「何もそんな青筋たててピアノを叩くモンじゃないよ。ショパンてぇのは、こんな風に弾くモンだよ」というマウツジンスキの呟きが聞こえてきそうな気になりました。
そして、彼のピアノでショパンを聴いていると、改めてショパンの音楽というのは基本的に「サロンの音楽」だったことに気づかされます。そう言う意味では、ソナタなんかよりはマズルカやワルツみたいな音楽の方がマウツジンスキにはあっているように思います。そして、もしも彼が終生このようなショパンを演奏していればもう少し彼の名前を多くの人の記憶にとどまったことでしょう。
これはあくまでも他人からの受け売りなので、自分の耳で確かめたことはにのですが、聞くところによれば60年代以降のマウツジンスキはさらに軽く淡泊なショパンになっていったそうです。50年代から60年代初めの頃のショパンが端麗な味わいだとすれば、その後は端麗が行き過ぎて「水くさく」なってしまったようなのです。そう言う意味では、60年前後に英EMIで録音された一連のショパン録音は彼の絶頂期を記録したものかもしれません。
埋もれさせるに惜しい録音をうまく拾いあげることができました。