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ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」


ケンペ指揮 ベルリンフィル 1957年9月2日録音をダウンロード

  1. ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」 「第1楽章」
  2. ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」 「第2楽章」
  3. ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」 「第3楽章」
  4. ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」 「第4楽章」

望郷の歌



ドヴォルザークが、ニューヨーク国民音楽院院長としてアメリカ滞在中に作曲した作品で、「新世界より」の副題がドヴォルザーク自身によって添えられています。

ドヴォルザークがニューヨークに招かれる経緯についてはどこかで書いたつもりになっていたのですが、どうやら一度もふれていなかったようです。ただし、あまりにも有名な話なので今さら繰り返す必要はないでしょう。
しかし、次のように書いた部分に関しては、もう少し補足しておいた方が親切かもしれません。

この作品はその副題が示すように、新世界、つまりアメリカから彼のふるさとであるボヘミアにあてて書かれた「望郷の歌」です。

この作品についてドヴォルザークは次のように語っています。
「もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう。」
「この曲はボヘミアの郷愁を歌った音楽であると同時にアメリカの息吹に触れることによってのみ生まれた作品である」


この「新世界より」はアメリカ時代のドヴォルザークの最初の大作です。それ故に、そこにはカルチャー・ショックとも言うべき彼のアメリカ体験が様々な形で盛り込まれているが故に「もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう」という言葉につながっているのです。

それでは、その「アメリカ体験」とはどのようなものだったでしょうか。
まず最初に指摘されるのは、人種差別のない音楽院であったが故に自然と接することが出来た黒人やアメリカ・インディオたちの音楽との出会いです。

とりわけ、若い黒人作曲家であったハリー・サンカー・バーリとの出会いは彼に黒人音楽の本質を伝えるものでした。
ですから、そう言う新しい音楽に出会うことで、そう言う「新しい要素」を盛り込んだ音楽を書いてみようと思い立つのは自然なことだったのです。

しかし、そう言う「新しい要素」をそのまま引用という形で音楽の中に取り込むという「安易」な選択はしなかったことは当然のことでした。それは、彼の後に続くバルトークやコダーイが民謡の採取に力を注ぎながら、その採取した「民謡」を生の形では使わなかったののと同じ事です。

ドヴォルザークもまた新しく接した黒人やアメリカ・インディオの音楽から学び取ったのは、彼ら独特の「音楽語法」でした。
その「音楽語法」の一番分かりやすい例が、「家路」と題されることもある第2楽章の5音(ペンタトニック)音階です。

もっとも、この音階は日本人にとってはきわめて自然な音階なので「新しさ」よりは「懐かしさ」を感じてしまい、それ故にこの作品が日本人に受け入れられる要因にもなっているのですが、ヨーロッパの人であるドヴォルザークにとってはまさに新鮮な「アメリカ的語法」だったのです。
とは言え、調べてみると、スコットランドやボヘミアの民謡にはこの音階を使用しているものもあるので、全く「非ヨーロッパ的」なものではなかったようです。

しかし、それ以上にドヴォルザークを驚かしたのは大都市ニューヨークの巨大なエネルギーと近代文明の激しさでした。そして、それは驚きが戸惑いとなり、ボヘミアへの強い郷愁へとつながっていくのでした。
どれほど新しい「音楽的語法」であってもそれは何処まで行っても「手段」にしか過ぎません。
おそらく、この作品が多くの人に受け容れられる背景には、そう言うアメリカ体験の中でわき上がってきた驚きや戸惑い、そして故郷ボヘミアへの郷愁のようなものが、そう言う新しい音楽語法によって語られているからです。

「この曲はボヘミアの郷愁を歌った音楽であると同時にアメリカの息吹に触れることによってのみ生まれた作品である」という言葉に通りに、ボヘミア国民楽派としてのドヴォルザークとアメリカ的な語法が結びついて一体化したところにこの作品の一番の魅力があるのです。
ですから、この作品は全てがアメリカ的なもので固められているのではなくて、まるで遠い新世界から故郷ボヘミアを懐かしむような場面あるのです。

その典型的な例が、第3楽章のスケルツォのトリオの部分でしょう。それは明らかにボヘミアの冒頭音楽(レントラー)を思い出させます。
そして、そこまで明確なものではなくても、いわゆるボヘミア的な情念が作品全体に散りばめられているのを感じとることは容易です。

初演は1893年、ドヴォルザークのアメリカでの第一作として広範な注目を集め、アントン・ザイドル指揮のニューヨーク・フィルの演奏で空前の大成功を収めました。
多くのアメリカ人は、ヨーロッパの高名な作曲家であるドヴォルザークがどのような作品を発表してくれるのか多大なる興味を持って待ちかまえていました。そして、演奏された音楽は彼の期待を大きく上回るものだったのです。

それは、アメリカが期待していたアメリカの国民主義的な音楽であるだけでなく、彼らにとっては新鮮で耳新しく感じられたボヘミア的な要素がさらに大きな喜びを与えたのです。
そして、この成功は彼を音楽院の院長として招いたサーバー夫人の面目をも施すものとなり、2年契約だったアメリカ生活をさらに延長させる事につながっていくのでした。

芸術がもっている理不尽さと闇に思いをはせる

ケンペと言えばベートーベンやブラームスに代表されるようなドイツ・オーストリア系の正統派の作品を手堅くまとめ上げるというイメージがついて回ります。ついでに付け加えれば、一聴しただけではその良さは伝わらないけれども、何度も繰り返し聞くうちにその真価が理解できる指揮者と言う評価もついて回りました。
ただし、少しばかり嫌みっぽく言えば、これほど情報があふれかえっている世の中で、一度聞いただけでは魅力がストレートに伝わってこないような演奏を、何度も繰り返し聞くような「暇人」がどれほどいるのだろうかと心配になってしまいます。

確かに、ケンペにとっての「本線」とも言うべきベートーベンやブラームスに関しては数多くの名演・名盤に恵まれていますから、その中でどれほど自己主張ができるのかと問われればいささか心許なくなってしまいます。ぱっと聞いただけでその凄みがストレートに伝わってくる演奏はいくつかありますし、さらに言えば、ケンペの持ち味である「一聴しただけではその良さは伝わらないけれども、何度も繰り返し聞くうちにその真価が理解できる」たぐいの(^^;録音ならば数多くあるからです。

ケンペのキャリアを振り返ってみれば、「早すぎる死によって不本意にも最晩年となってしまった60代には巨匠の地位に上り詰める一歩手前までいったものの、その突然の死によって急速に忘れ去られてしまった指揮者」という括りがされてしまいます。
これがベームのように大きな存在になってしまっていれば、その死語に「ベームは二度死んだ」みたいな批判にさらされたのかもしれませんが、ケンペの場合は静かにフェードアウトしていきました。そして、そのような存在であったが故に、己の見識の広さと深さを主張したい人はこういう指揮者を意識的に持ち上げる向きがあります。
もちろん、そのような再発見、再発掘は非常に意義深いことも多いのですが、しかし、改めて彼のベートーベンやブラームスの録音を聞き返してみると、その他の凡百の演奏と同一とまでは言いませんが、数多くあるすぐれた演奏・録音の一つという範疇にとどまるものだと思います。

しかし、不思議なことなのですが、そう言う「本線」以外の演奏になると不要な縛りから抜け出せたのか、意外と面白い録音が目につきます。たとえば、ドヴォルザークの「新世界より」の第2楽章で聞ける深い情感あふれる表現は出色です。第3楽章から最終楽章へと突き進んでいくベルリンフィルからはドイツの田舎オケらしいゴリゴリとした迫力が感じられてこれもまたかなり魅力的です。
私は聞いたことはないので確証はできませんが、ネット情報によると、同じ時期に録音したシューマンの1番なんかもかなり野蛮な演奏だったようです。
しかし、「ウィーンフィルとの休日」と題した61年録音のアルバムなどを聴くと、休日と言いながら、そしてせっかくのウィーンフィルを相手にしながら、律儀さと生真面目さが前面に出てきてしまっていて、悪くはないのですがどこか楽しめない部分が残ってしまいます。

ケンペと言えば相手が女王陛下でもタクシードライバでも全く態度を変えないと言われたジェントルな立ち居振る舞いが評価され、その暖かな人間性も相まって存命中は高い人気を誇った人でした。
ただ残念に思うのは、亡くなった後に作品のみで評価されるようになると、生き残るのはどいつもこいつも「イヤな奴」ばかりだという厳然たる事実です。それは指揮者に限っただけでも、狂犬トス○○ーニや女誑しフルト○○○ラー以降、ほとんど絶対的な真実かと思えるほどです。

ケンペの端正で律儀な音楽を聴きながら、芸術がもっているそう言う理不尽さと闇に思いをはせるというのはかなり屈折した聴き方だとは思うのですが、それでも彼ほどにそう言う理不尽さを体現している指揮者はいないように思います。

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