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バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番 Sz.112
バーンスタイン指揮 (Vn)スターン ニューヨークフィル 1958年1月26日録音をダウンロード
聞きやすいことは「良いことです」
一昔前は「ヴァイオリン協奏曲」とだけ記されていたのですが、バルトークの死後に「ヴァイオリン協奏曲第1番」となるべき作品がシュテフィ・ゲイエルなる女性ヴァイオリニストの遺品から発見されたので、それ以後は「ヴァイオリン協奏曲第2番」と呼ばれるようになった作品です。
バルトークと言えば、アメリカに亡命してからは人肌に優しい音楽を書くようになったのですが、ヨーロッパ時代はかなり尖った音楽を書いていました。
この協奏曲は、まさにそう言う狭間の時代であった1937年から38年にかけて創作されています。この頃のバルトークは、構造は緻密であってももう少し人肌に優しい響きで音楽を書くようになり、尖った雰囲気は交替していきます。一部の専門家はこういう変化をバルトークの後退と評する向きもあるのですが、やはり聞きやすいことは「良いことです」。
まず驚くのは、冒頭は古式ゆかしくハープの響きで音楽が導入されるのです。そして、その響きに導かれて歌い出すヴァイオリンの独奏は非常に親しみやすい民族音楽的な五音階風のメロディです。このメロディの源流は「ヴェルブンコシュ」というハンガリのダンス音楽だそうです。
ただし、このまま最後まで五音階で言ったのではバルトークの音楽ではなくなってしまいます。やがて、音数がどんどん増えていって、いわゆる12音を全部使った調性の曖昧な音楽に変化していくのですが、それでも無調の彼方に飛んでいってしまうことはありません。
また、第1楽章の最後のあたりには微分音程の代表格である「四分音」なども登場するのでヴァイオリニストにとっては大変な作品なのですが、それでも「難解」というイメージは全くありません。
また、オーケストラの響きも多彩で、第2楽章ではとがった雰囲気などみじんもない優美なヴァイオリンの響きと一緒になって哀愁漂う世界を描き出しています。
そして、それらをうけた最後の楽章では、さらにオケが活躍してマジャールの魂が爆発するような疾走感が魅力的です。
作品はハンガリー弦楽四重奏団を主宰していた、ゾルターン・セーケイの依頼によって書かれ、彼に献呈されています。
この作品のベスト録音かもしれないと思わせるだけの素晴らしさ
バーンスタインとスターンという組み合わせは、こういう20世紀の作品と取り組むときに最高のパフォーマンスを発揮するようです。そして、その相性はベルクのヴァイオリン協奏曲の時よりも良好なように思えます。もしかしたら、今もってこの演奏はこの作品のベストかもしれないと思わせるだけの素晴らしさに満ちています。
その特徴は、基本的にベルクの作品について述べたことと同じです。
「バーンスタインと言えば思いの丈をぶつけるような粘着質な音楽作りが想像されるのですが、此処でのバーンスタインは真逆のスタンスで音楽に向かっています。
そして、そのような精緻なキャンパスをバックに、スターンならでは太めの筆遣いでぐいぐい描き出していくラインは人の心に触れてくる暖かさがあります。」
ただし、ベルクの作品が基本的に無調の作品であったのに対して、バルトークの作品にはそのような「尖った」部分は希薄です。
どちらかと言えば、作品全体を人肌の優しさが覆っています。そんな、優しさをこの二入は絶妙なバランス感覚で描き出してくれます。