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ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」

ウィリアム・スタインバーグ指揮 ピッツバーグ交響楽団 1956年4月19日録音

  1. ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 「第1楽章」
  2. ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 「第2楽章」
  3. ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 「第3楽章」
  4. ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」 「第4楽章」


わかりやすさがなにより・・・でしょうか

短調の作品ばかり書いてきたブルックナーがはじめて作曲した長調(変ホ長調)の作品がこの第4番です。
この後、第5番(変ロ長調)、第6番(イ長調)、第7番(ホ長調)と長調の作品が続きます。

その中にあっても、この第4番は長調の作品らしい明るい響きと分かりやすい構成のためか、ブルックナー作品の中では早くから親しまれてきました。
「ロマンティック」という表題もそのような人気を後押ししてくれています。

この表題はブルックナー自身がつけたものでありません。
弟子たちが作品の解説をブルックナーに求めたときに、ブルックナー自身が語ったことをもとに彼らがつけたものだと言われています。

世間にはこのような表題にむきになって反論する人がいます。
曰く、絶対音楽である交響曲にこのような表題は有害無益、曰く、純粋な音楽の美を語るには無用の長物、などなど。

しかしながら、私はけっこう楽しんでいます。
それに、この作品の雰囲気に「ロマンティック」と言う表題はなかなか捨てたもんではありません。

それから、ブルックナーというと必ず版と稿に関わる問題がでてきます。この4番についても1874年に作曲されてから、81年に初演されるまでに数え切れないほどの改訂を繰り返しています。
そういう詳細にこだわるブルックナーファンは多いのですが、私にはその詳細をおってここに詳述する能力もやる気もありませんので、そういう情報が必要な人は別のサイトを当たってください。

おーっ、相手がブルックナーでもいつもの通りにやっとるなぁ!みたいな演奏です


最近はあまり使われなくなりましたが、一頃「ト盤」という言葉がよく使われました。
「ト盤」とは「とんでもない演奏が収録されているレコード(CD)盤」という意味なのですが、その「とんでもない」というのは当然の事ながら「とんでもなく素晴らしい」という意味ではありません。そう言うのはごく普通に「名盤」とか「決定盤」という、それはそれでよく分からない言葉が使われます。

かといって、その逆の「とんでもなく酷い」演奏という意味でもありません。

つまりは、「ト盤」の「とんでもない」というのは良し悪しの価値判断を伴う物ではなくて、世間一般の常識からかけ離れた「破天荒」な演奏という意味での「とんでもない」なのです。

ですから、その「破天荒」さは受け取る側のスタンスによって「価値判断」に関しては大きく異なってしまうと言う特徴を持っています。
ある人にとっては、それは「とんでもない名演」になることもあるのですが、また別の人にとっては放り投げて踏み割ってしまいたい思いにかかられるほどの「犯罪的演奏」ともなるのです。

ただ、どちらのスタンスを取るにしても一つだけ共通していることがあります。
それは、その作品を聞くときに、一番最初に聞いては絶対にいけないと言うことです。それは、その「ト盤」を名演と断じた人でも同意するはずです。

そして、ここで紹介しているスタインバーグのブルックナーもまたその様な「ト盤」の名誉に与る資格を有している録音です。
これが「ト盤」である理由は基本的に以下の2点です。


  1. 改竄版によるステレオ録音

  2. 快速テンポによる脳天気なまでの造形



ブルックナーの版と稿に関わる問題はこだわりはじめるとキリがないほどに煩雑ですので、ここでは深入りはしません。しかし、そんな難しいことは知らなくても、このスタインバーグの「ロマンティック」を聞いてみれば、いつも聞いてきた「ロマンティック」とは随分と雰囲気が違うことくらいはすぐに気づくと思います。
なんと言っても、あっという間に終わってしまいますから、大幅なカットを施した第3稿と呼ばれるレーヴェ改訂版を下敷きにしているのではないかと思われますが、その辺りの詳しいことは分かりません。

しかし、この第3稿はブルックナー本人による承認のサインがないので、長きにわたって弟子たちがブルックナーに無断で改竄したものと思われていたのですが、最近になってそうとも言い切れないという事が分かってきたようです。そうなると、原理主義的なブルックナー信奉者でも、それほど簡単にこの録音を「犯罪的」と断罪できなくなると言うことになります。
どちらにしても、こういう「改竄盤」をこれほどの優れたステレオ録音で聞けるという意味だけでも「ト盤」の資格は十分です。

ところが、このスタインバーグ盤の真に「とんでもない」要素は2番目にあげた「快速テンポによる脳天気さ」にこそあります。
再生ボタンを押して音楽が流れ出すと、これってブルックナーだよね、と言う思いが誰の脳裏にも駆けめぐるはずであり、聞き進むにつれてそのブルックナーである事への疑念は広がり、ブルックナーだという確信が揺らいでいくという代物です。

そして、そう言う疑念と確信がせめぎ合う中で、音楽はあれよあれよという間に終わってしまうのです。
そして、ブルックナーの神聖性を固く信じている人は、金管が高らかに明るく鳴り響くのを聴いて、その戸惑いが一気に怒りへと変化することでしょう。

これはもう、いつもはゲルマンの森に住んでいる野人が、一体何があったのかは分かりませんが、まるで地中海沿岸のリゾート地にやってきて砂浜でバカンスを過ごしているような音楽になっています。
ただし、それが向こう受けを狙った「外連」ならば嫌みしか残らないのですが、スタインバーグの録音をそれなりにまとめて聞いている人ならば、それもまた「いつものやり方でブルックナーを演奏してみればこうなりました」という物であることがすぐに了解できるはずです。

おーっ、相手がブルックナーでもいつもの通りにやっとるなぁ!みたいな感じです。
とは言え、これを「名演」と行って他人様に勧める勇気はありませんが、それこそ色々なブルックナーを聞いてきて、最近はいささか「飽きてきた」などと恐れ多いことを感じている人ならば、一度は聞いてみる値打ちはある演奏です。

なお、最後に録音に関する問題について一言だけふれておきます。
これもまた、「玩具みたいな金管の響き」とか「劣悪極まるモノラル録音」みたいな評価が溢れていますが、一体、何をどのように聴けばその様な評価が出てくるのか理解に苦しみます。

1956年の録音ですから、ステレオで録音されていても最初のリリースはモノラル盤でした。ですから、復刻盤についてもモノラルで復刻した物とステレオで復刻された物が混在しています。ですからこれをモノラル録音だと言っている人はまだ理解できるのですが、首をひねるのは「スタインバーグ/キャピトル・レコーディングス」に収録されている音源はモノラルなので要注意と書いている人がいることです。

これは聞けばすぐ分かるように、非常に優れた「ステレオ録音」です。
これをモノラル録音と勘違いできるというのはどれほどの再生システムなんだと訝しく思ったのですが、調べてみると発売元のクレジットが「モノラル」になっているのですね。

こういう肝心なことを間違ってクレジットしてしまうレーベルも困りものですが、自分で聞きもしないでそう言う情報を鵜呑みにして発信してしまうのも困りものです。
とは言え、こういう事は他人事ではないので、自戒しなければいけません。

それから、この「Warner Icon」シリーズにに収録されたスタインバーグのステレオ録音は、低域方向までしっかりと収録して、その上でオケがバランスよく響いていますから、その低域の方が過不足なく再生できないと音楽の雰囲気が随分変わります。
もう一度繰り返しますが、「どうにかステレオ録音」と書いている人もいるのですが、残響過多でへたれた響きしかしない最新録音よりはよほどクオリティの高いステレオ録音です。