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ヘンデル:水上の音楽(クリュザンダー版)
エドゥアルト・ファン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1958年7月1日~5日録音をダウンロード
水上の音楽 組曲第1番 ヘ長調 HWV 348
- Overture
- Adagio e staccato
- Allegro - Andante - Allegro
- A tempo di minuetto
- Air
- Menuet
- Bourree
- Hornpipe
- Allegro moderato
- Andante allegro
水上の音楽 組曲第2番 ニ長調 HWV 349 - 第2曲 アラ・ホーンパイプ
水上の音楽 組曲第3番 ト長調 HWV 350
- Menuet
- Aria: Allegro
- Loure: Lentement
- Air: Allegro
- Menuet: Moderato
- Menuet: Allegretto
- Affettuoso - Cantabile
- Coro: Pomposo
機会音楽
「水上の音楽」は名前の通り、イギリス国王の船遊びのために、そして「王宮の花火の音楽」は祝典の花火大会のために作曲された音楽です。
<追記>
一般的には、1715年のテムズ川での王の舟遊びの際にこの曲を演奏した、というエピソードが有名ですが、最近の研究では事実ではないと考えられているようです。
ただし、その2年後の舟遊びでは演奏されたことは間違いないようです。
<追記終わり>
クラシック音楽の世界では、こういう音楽は「機会音楽」と呼ばれます。機会音楽とは、演奏会のために作曲されるのではなく、何かの行事のために作曲される音楽のことをいいます。それは純粋に音楽を楽しむ目的のために作られるのではなく、それが作られるきっかけとなった行事を華やかに彩ることが目的となります。ですから、一般的には演奏会のための音楽と比べると一段低く見られる傾向があります。
しかしながら、例え機会音楽であっても、その創作のきっかけが何であれ、出来上がった作品が素晴らしい音楽になることはあります。その一番の好例は、結婚式のパーティー用に作曲されたハフナー交響曲でしょうか。
そして、このヘンデルの2つの音楽も、典型的な機会音楽でありながら、今やヘンデルの管弦楽作品を代表する音楽としての地位を占めています。
機会音楽というのは、顧客のニーズにあわせて作られるわけですから、独りよがりな音楽になることはありません。世間一般では、作曲家の内なる衝動から生み出された音楽の方が高く見られる傾向があるのですが、大部分の凡庸な作曲にあっては、そのような内的衝動に基づいた音楽というのは聞くに堪えない代物であることが少なくありません。それに対して、モーツァルトやヘンデルのようなすぐ入れた才能の手にかかると、顧客のニーズに合わせながら、音楽はそのニーズを超えた高みへと駆け上がっていきます。
そして、こんな事を書いていてふと気づいたのですが、例えばバッハの教会カンタータなどは究極の機会音楽だったのかもしれないと気づきました。バッハが、あのようなカンタータを書き続けたのは、決して彼の内的な宗教的衝動にもとづくのではなく、それはあくまでも教会からの要望にもとづくものであり、その要望に応えるのが彼の職務であったからです。そう考えれば、バッハの時代から、おそらくはベートーベンの時代までは音楽は全て基本的に機会音楽だったのかもしれません。
なお、「水上の音楽」は楽譜は出版されず、自筆譜もほとんどが消失しているために、曲の配列や演奏形態も確定されていません
以下のような19曲と3つの組曲に分ける形態が一般的なものとされています。
第1組曲 ヘ長調 HWV 348(9曲)
- 第1曲「序曲(ラルゴ - アレグロ)」
- 第2曲「アダージョ・エ・スタッカート」
- 第3曲「(アレグロ) - アンダンテ - (アレグロ)」
- 第4曲「メヌエット」
- 第5曲「エアー」
- 第6曲「メヌエット」
- 第7曲「ブーレ」
- 第8曲「ホーンパイプ」
- 第9曲(アンダンテ)
第2組曲 ニ長調 HWV 349(5曲)
- 第1曲(序曲)
- 第2曲「アラ・ホーンパイプ」
- 第3曲「ラントマン」
- 第4曲「ブーレ」
- 第5曲「メヌエット」
第3組曲 ト長調 HWV 350(5曲)
- 第1曲(メヌエット)
- 第2曲「リゴードン」
- 第3曲「メヌエット」
- 第4曲(アンダンテ)
- 第5曲「カントリーダンスI・II」
コンセルトヘボウの響きを最大限に生かして、驚くほど透明感のある「水上の音楽」を実現している
このベイヌムによる「水上の音楽」はセルやカラヤンのように刈り込んだ「ハーティ版」ではなくて全曲演奏です。しかし、新ヘンデル全集の「レートリッヒ版」とは少しばかり違う、旧ヘンデル全集の「クリュザンダー版」なるものが使われています。このあたりの版の問題はややこしいですし、そんな事が分からなくても音楽を聞く上では何の不都合もないので(不都合があるというピリオド演奏原理主義の方もおられるのですが)これ以上はふれません。
ただ、聞いてみれば分かるように、新全集版では第3組曲はやや地味めで退屈な感じは否定できないので、第2組曲の派手めの音楽をうまく挟み込んで飽きが来ないように配列されています。
そして、こういう「演奏効果」に関わる話は、原理主義的にこだわらない指揮者ならば「エイやっ!」と採用する人もいるので、今でも廃れてはいないようです。
水上の音楽 組曲第1番 ヘ長調 HWV 348
- Overture
- Adagio e staccato
- Allegro - Andante - Allegro
- A tempo di minuetto
- Air
- Menuet
- Bourree
- Hornpipe
- Allegro moderato
- Andante allegro
水上の音楽 組曲第2番 ニ長調 HWV 349 - 第2曲 アラ・ホーンパイプ
- Alla Hornpipe
水上の音楽 組曲第3番 ト長調 HWV 350
- Menuet
- Aria: Allegro
- Loure: Lentement
- Air: Allegro
- Menuet: Moderato
- Menuet: Allegretto
- Affettuoso - Cantabile
- Coro: Pomposo
ベイヌムはコンセルトヘボウの響きを最大限に生かして、驚くほど透明感のある「水上の音楽」を実現しています。
「ハーティ版」を使ったときのような大仰な感じはないのですが、バロック音楽を聞いていると時に感じる「退屈」さからはうまく逃れています。また、「クリュザンダー版」を使った録音というのも珍しいので、その部分でもレア感があります。