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メンデルスゾーン:交響曲第1番 ハ短調, Op.11


デヴィッド ジョセフォヴィッツ指揮 パリ・オペラ座管弦楽団 1961年録音をダウンロード

  1. Mendelssohn:Symphony No.1, Op.11 [1.Allegro di molto]
  2. Mendelssohn:Symphony No.1, Op.11 [2.Andante]
  3. Mendelssohn:Symphony No.1, Op.11 [3.Menuetto. Allegro molto - Trio]
  4. Mendelssohn:Symphony No.1, Op.11 [4.Allegro con fuoco ? Piu stretto]

到底ミドル・ティーンの手になるものとは信じがたいほどの完成度を持っている



メンデルスゾーンは12才から14才に至る2年間に弦楽合奏のための交響曲を12曲作曲しています。そして、15才の時に、まさに満を持して2菅編成(トロンボーンを含みません)による本格的な交響曲の作曲に着手します。
作曲は順調に進み、およそ半年ほどの間に書き上げてしまったようです。つまりは、この交響曲は彼の15才の前半を使って書かれた交響曲なのです。

完成した交響曲は彼がそれまでに必死に学んできたハイドンやモーツァルト、ベートーベンの影響と、ウェーバーが新しく生み出した響きなどを取り込んだものでした。
そして彼が17才の時にヨハン・フィリップ・シュルツの指揮によるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演も為されます。到底ミドル・ティーンの手になるものとは信じがたいほどの完成度を持ったその交響曲は好意的に受け止められました。さらに、その2年後にはメンデルスゾーン自身の指揮によってロンドンのフィルハーモニック協会の演奏会において披露され、初演時以上の成功を勝ち取ります。

しかしながら、今日ではこの作品が演奏される機会は非常に少ないと言えます。同じく、録音の数も多くはありません。
やはり、どこかに「若書きの作品」という思いがあるのかもしれませんし、別の面から言えばメンデルスゾーンの勤勉さ故に、その作品には先人たちの模倣のように感じられる部分が大きいと見なされるのかもしれません。

しかし、例えば、第1楽章の長大なコーダなどを聴いていると、そこには15才少年から青年へと脱皮していくような時期でなければ書けないような若々しい息吹を感じずにはおれません。そして、おそらくはメンデルスゾーンの大きな功績と言えるであろう「夏の夜の夢序曲」で表現したオーケストラによる全く新しい響きの萌芽がこの作品にもしっかりと刻み込まれています。

なお、面白いのはロンドンでの演奏会の時には第3楽章を八重奏曲のスケルツォ楽章に置き換えたことです。
このスケルツォ的なメヌエットとコラール風のトリオを持ち、さらにはベートーベンの5番の3楽章から4楽章への移行を連想させるような魅力的な楽章に対して、どうしてそのようなことを行ったのかは全く謎です。
もっとも、そのあたりに、あまりにも勤勉で真面目に過ぎたが故の彼の人生の陰が生まれつつあったのかもしれません。

掘り出し物の一枚

久しぶりに中古レコード屋さんをまわってきました。もう1年半ほど大阪市内には出かけていなかったのですが、ワクチン接種も2回終えて2週間ほどたった7月の中旬に出かけてきました。
その頃はまだ感染者数も爆発的には拡大しておらず、デルタ株の広がりも限定的だったので思い切って出かけたしだいです。
しかし、8月に入ってからは再び自粛モードですね。それに、出かける気がなくなるほどの猛暑ですからしかたがありません。

今の時代ネットでも中古レコードは買えるのですが、私が好きなのは300円均一のコーナーを漁ることです。まさに盤質の良し悪しも運次第ですし、レコードの種類も玉石混淆です。
しかし、調べてみるとこれが意外と掘り出し物がまじっていたりして、それが盤質も上々だったりするとまさに「大当たり」と言うことになります。もちろん、「外れ」も多いのですが、それもまた一枚300円(税込み330円)ですから、外れでも仕方なしです、
私は買いませんが、まあ、宝くじみたいなものです。

そして、その7月にまわったときに見つけたのがこの一枚です。
まずはメンデルスゾーンの1番と4番というカップリングが珍しいですし、何よりもバルビローリのメンデルスゾーンというのはあまり記憶の中になかったのですぐにゲットすることにしました。
後で調べてみると、バルビローリはメンデルスゾーンの交響曲はこの4番しか録音していなくて、後は1948年のモノラルでしかセッション録音はないようなのです。そして、そのモノラル録音は手もとにあったのですが、この61年のステレオ録音はなかったので、個人的には「大当たり」の一枚でした。もしかしたらこの録音は未だにCD化されていないのかもしれません。(英バルビローリ協会からのCD、「JSB 1069-70」で発売されているとの情報をいただきました。)

ただし、盤質はいささか難有りで、かなり丁寧にクリーニングしたのですがパチパチ・ノイズは取り切れませんでした。
しかし、48年のモノラル録音の音質はかなりしょぼいので、それと比べればバルビローリ&ハレ管の魅力ははるかに優れた形で収録されています。そして、この時代のバルビローリはドヴォルザークやチャイコフスキーの交響曲で非常に優れた録音を残しているのですが、これもまたそれらに匹敵するほどの優れものです。

バルビローリの特徴は、言うまでもなく弦楽器セクションの処理の仕方にあります。
彼は新しい作品と向き合うときは弦楽器のパートの奏法をすべて記入しながら進めていったと言われています。おそらく、このメンデルスゾーンでも同じ事をやったのでしょう。溌剌としたリズム感による疾走感を失うことなく、歌うべきところはバルビローリならではの歌心に溢れています。
そして、さらに驚いたのは、裏面に収録されているデヴィッド・ジョセフォヴィッツによるメンデルスゾーンの1番です。
「デヴィッド・ジョセフォヴィッツってだれ?」という感じだったのですが、これもまた調べてみて驚き、なんとコンサート・ホール・ソサエティ(Concert Hall Society)の創設者だったのです。このレーベルはデヴィッドとサミュエルの兄弟が1946年に創業したものでした。
そして、音楽面はこのデヴィッド・ジョセフォヴィッツが全面的に取り仕切っていたようなので、おそらく会社の経営面はサミュエルが取り仕切るという役割分担をしていたのでしょう。

1950年代に入って会社の経営が安定すると、ヨーロッパに進出するために子会社を設立し、オランダやスイスを拠点として独自の収録活動をはじめます。
このバルビローリの録音も地元のイギリスではなくて、スイスのベルンで行われたようです。おそらく、演奏旅行の途中にでも収録したのでしょう。

デヴィッドはヴァイオリニストとしても活動しており、優れた音楽家であると同時に優れたプロデューサーでもあったようです。
おそらく、このレーベルがなければ晩年のシューリヒトやモントゥーの貴重な演奏を聞くことができなかったでしょうから、それだけでも感謝あるのみです。

もちろん、指揮者としても悪くない存在で、ほとんど演奏される機会のないメンデルスゾーンの1番の姿を、オペラ座のオケを使って過不足なく描き出しています。
この作品はメンデルスゾーンが15才の時の作品で、そこには初のフル編成による交響曲に対する意気込みを感じさせるものがあります。デヴィッドの指揮は作品に内在するそのような意気込みからくる若々しい勢いを見事に表現しています。