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ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 変ホ長調 「海の嵐」Op. 8, No. 5, RV 253(Vivald:Violin Concerto in E-Flat Major, Op. 8, No. 5, RV 253, "La tempesta di mare")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)をダウンロード
- Vivald:Violin Concerto in E-Flat Major, Op. 8, No. 5, RV 253, "La tempesta di mare" [1.Presto]
- Vivald:Violin Concerto in E-Flat Major, Op. 8, No. 5, RV 253, "La tempesta di mare" [2.Largo]
- Vivald:Violin Concerto in E-Flat Major, Op. 8, No. 5, RV 253, "La tempesta di mare" [3.Presto]
相反する二つの要素を融合

「和声と創意の試み」ヴィヴァルディが1725年に出版した全12曲からなるヴァイオリン協奏曲集です。その中の最初の4曲は「四季」と言う名前で認知度は抜群なのですが、残りの8曲となると全くのマイナー曲になります。
しかし、ヴィヴァルディが書いたのはあくまでも12曲からなる 「和声と創意の試み」であって、「春」「夏」「秋」「冬」というのは、あくまでも最初の4曲につけたタイトルでした。ヴィヴァルディにはその4曲をセットとして「四季」などと言う作品を書いた覚えはなかったはずです。
全12曲の協奏曲で構成された「和声と創意の試み」は大半がヴァイオリン独奏と弦楽合奏、通奏低音のために書かれています。
「和声」とは「伝統的な音楽のルール」であって、「創意」とは「自由な独自のアイデア」と言うような意味合いをもっていたようです。彼はその相反する二つの要素を融合させるという思いがあったのでしょう。
この曲集の特徴は各楽曲には「ソネット(詩)」が書き込まれていることです。そして、そのソネットに添って自然の情景や人々の営みを音でリアルに表現しています。
- 全12曲の構成
- 第1番 ホ長調 RV 269 「春」
- 第2番 ト短調 RV 315 「夏」
- 第3番 ヘ長調 RV 293 「秋」
- 第4番 ヘ短調 RV 297 「冬」
- 第5番 変ホ長調 RV 253 「海の嵐」
- 第6番 ハ長調 RV 180 「喜び」
- 第7番 ニ短調 RV 242 「ピゼンデル氏のための協奏曲」
- 第8番 ト短調 RV 332
- 第9番 ニ短調 RV 236 (オーボエ協奏曲としても演奏されます)
- 第10番 変ロ長調 RV 362 「狩り」
- 第11番 ニ長調 RV 210
- 第12番 ハ長調 RV 178 (オーボエ協奏曲としても演奏されます)
ヴァイオリン協奏曲 変ホ長調 「海の嵐」Op. 8, No. 5, RV 253
- 第1楽章:Presto
荒れ狂う嵐の始まりと、激しくうねる白波を描写したドラマチックな楽章です。
冒頭から、全楽器が激しい同音連打や下降音型を執拗に繰り返し、突風が吹き荒れ、海が荒れ始める様子を一瞬で表現します。
独奏ヴァイオリンが登場すると、波の激しさはさらに増します。弦から弦へと素早く飛び移る移弦や、激しいアルペジオが多用され、これが激しくのたうつ大波や、叩きつける雨をリアルに描き出します。
終始、息をもつかせぬスピード感で演奏され、バロック音楽らしい明快な調性と、嵐の不穏な響きが交互に押し寄せます。 - 第2楽章:Largo
嵐の合間の不気味な静けさ、または夜の海の孤独を想起させる、深く重々しい緩端楽章です。
明るい変ホ長調から、哀愁を帯びたハ短調へと転調します。
オーケストラの低音楽器が、まるで遠くで鳴り響く雷鳴や、不気味にうごめく深海のように、低く長い音を保ち続けます。その重苦しい伴奏の上で、ソロ・ヴァイオリンが切なく美しいメロディを綿々と歌い上げます。
激しい第1楽章とは対照的に、一音一音に感情を込めた表現力と、美しい音色が求められる聴きどころです。 - 第3楽章:Presto
すべてを飲み込むような、最大風速の暴風雨を描くフィナーレです。
第1楽章よりもさらに拍子の刻みが細かくなり(2/4拍子)、16分音符がノンストップで駆け抜けます。
これにより、嵐のスピード感と狂暴性が限界まで高まります。
オーケストラが演奏する主題が何度も形を変えて戻ってきて、嵐が収まることなく何度も襲いかかってくる絶望感や自然の猛威を表現します。
ソロ・ヴァイオリンはオーケストラの荒波に立ち向かうかのように、より一層激しいパッセージを奏で、最後は全合奏による圧倒的なエネルギーのまま力強く全曲を閉じます
マリノ・カピキオーニ
フェリックス・アーヨはイ・ムジチ合奏団は創設期の中心メンバーであり、初代コンサートマスターとして合奏団をリードしていった存在です。彼らが1959年に録音したヴィヴァルディの「四季」はいまさらふれる必要もないほどの世界的な大ベストセラーとなりました。
ここで取り上げている協奏曲集「調和の霊感(L'estro armonico)作品3」は「四季」以外の協奏曲も紹介しようという事で1961年に録音されたもののようです。
もちろん、「四季」ほどには売れなかったのは仕方がありません。しかし、フェリックス・アーヨの美音をたっぷりと楽しめる優れモノの録音です。
フェリックス・アーヨはスペイン・バスク地方出身で、これまたよくあるように「神童」として頭角を現したヴァイオリニストです。
スペインのセスタオに生まれ、ビルバオ音楽院をわずか14歳で最優秀の成績で卒業して「神童」と呼ばれたようです。
その後、パリ、シエナを経て、ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミアで名師レミジオ・プリンチーペに師事しました。
そして、1951年、18歳でイ・ムジチ合奏団の創設に参加し、初代コンサートマスターを務めるようになったわけです。
彼のヴァイオリンの美質は、美しく、気品に満ちたカンタービレにあります。
そして、その美音を支えたのが名器「マリノ・カピキオーニ」でした。
アーヨは1955年のモノラルでの「四季」の録音では友人のカピキオーニ(1939年製)を借用していました。
そして、その響きを深く気にいったアーヨはり、翌年に自身専用のマリノ・カピキオーニ(1956年製)を特注しました。
以降17年以上にわたり、この楽器をメインとして数々の名盤を残しました。
ヴァイオリンといえば猫も杓子も「ストラディヴァリウス」という風潮の中で、それは凄い選択だと言わざるを得ません。
誰も彼もが「ストラディヴァリウス」をほしがる中でフェリックス・アーヨは、あえて20世紀イタリアの現代名工マリノ・カピキオーニ(1956年製)を特注し、生涯の相棒としたのです。
ストラディヴァリウスの華やかな輝きとは一味違う、アーヨならではの「温かく、シルクのように艶やかなモダン・イタリアンの響き」は、このカピキオーニだからこそ生まれたものでした。
当然の事ながら、「調和の霊感」もまた「マリノ・カピキオーニ」で演奏しています。そう思って聞いてもらえば、また感じるものがあるのではないでしょうか。