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ベートーベン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
Vn.ハイフェッツ ミンシュ指揮 ボストン交響楽団 1955年11月27&28日録音をダウンロード
忘却の淵からすくい上げられた作品
ベートーベンはこのジャンルの作品をこれ一つしか残しませんでした。しかし、そのたった一つの作品が、中期の傑作の森を代表するする堂々たるコンチェルトであることに感謝したいと思います。
このバイオリン協奏曲は初演当時、かなり冷たい反応と評価を受けています。
「若干の美しさはあるものの時には前後のつながりが全く断ち切られてしまったり、いくつかの平凡な個所を果てしなく繰り返すだけですぐ飽きてしまう。」
「ベートーベンがこのような曲を書き続けるならば、聴衆は音楽会に来て疲れて帰るだけである。」
全く持って糞味噌なけなされかたです。
こう言うのを読むと、「評論家」というものの本質は何百年たっても変わらないものだと感心させられます。
ただし、こういう批評のためかその後この作品はほとんど忘却されてしまい、演奏会で演奏されることもほとんどありませんでした。その様な忘却の淵からこの作品をすくい上げたのが、当時13才であった天才ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムでした。
1844年のイギリスへの演奏旅行でこの作品を取り上げて大成功をおさめ、それがきっかけとなって多くの人にも認められるようになりました。
この曲は初演以来、40年ほどの間に数回しか演奏されなかったと言われています。そして1844年に13歳のヨアヒムがこの曲を演奏してやっと一般に受け入れられるようになりました。
第一楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
第二楽章 ラルゲット
第三楽章 ロンド アレグロ
いまいち面白味に欠ける・・・かな?
ちょっと音質がさえないのでアップするのを迷いました。最近は「Living Stereo」シリーズでマスターに近い音質のCDも出ているので、それと比べるとかなり見劣りがします。本当に、昔の「国内盤」というものはマスターテープから何代にもわたってコピーされたテープから制作されたものだったんだあらためて思い知らされます。
さて演奏の方ですが、やはりベートーベンみたいな作品だと彼の「芸人」としての側面が発揮できないので、いまいち面白味に欠けると言わざるをえません。事情はブラームスなんかでも同様です。
これが、メンデルスゾーンやチャイコフスキーのような外連味溢れるロマン派の作品だと芸人ハイフェッツの面目躍如たるものがあります。
やはり「相性」というものはあるようです。
とは言え、曖昧さを排して作品をまるで磨き抜かれた彫刻のように造形していく技量はなかなかに見事なものです。ただし、そう言う見事さならば、最近の馬鹿ウマ若手でも十分可能になってるところに、現代の聞き手からそう言う我が儘が出てしまうゆえんでもあります。
1917年にアメリカデビューを果たしたときに「現代の奇跡」と言われたハイフェッツのテクニックも、今の時代から見れば奇跡でも何でもなく、演奏家として飯を食っていきたいならばクリアしなければならないレベルのものでしょう。少なくとも私の耳にはその様に聞こえます。そう言う意味では、この手の録音は演奏史における一つの時代を語るものとしての価値しか持たないようになっていくのかもしれません。
うーん、アップしながら悪口ばかりというのは、またまたご批判のメールをいただきそうだな・・・(^^;